おばさんにはなれません。

30代,もう若者じゃないけどおばさんにもなりきれない人が日々考えていること

雨宮まみさん,大好きでした

大好きな人がこの世を去ってしまった。

ライターの雨宮まみさんだ。

あまりに突然のことで,今でもとても信じられない。

そのことを知ったのは,外国での用事を終え,最後の楽しみにとっておいた博物館めぐりをしているときだった。

休憩に立ち寄ったカフェで何気なくツイッタ―を見たら,TL上の友人がみんな嘆いたり絶句していたりして,何があったのかと思ったら,まさかの訃報だった。

 

雨宮さんが私にとってどれだけ大きな存在だったのか,いなくなって改めて思い知った。会ったこともない,文章でしか知らない人なのに。

女であること,歳をとること,自信がないこと,それでも欲望があること。

そのすべてをうまく受け入れられないでいた私を,そのままでいいんだよと包みこんだり,時にのろまな私のペースに合わせて一緒に走ってくれたり,「これでも飲みな!」とテキーラのショットグラスを突き出してくれたり,とにかく優しい言葉を書いてくださった人だった*1

優しさにも,知性にも,野心や欲望の描き方にも,クールなお顔にも,すべてに憧れていた。

誇張でもなんでもなく,彼女が同じ時代を生きて,私の先を走っていてくれるならば,女であることも歳を取ることも楽しいのかもしれないと,本気で思っていた*2

 

大和書房・WEB連載MOB〜40歳がくる! 雨宮 まみ vol01

 

彼女のいない世界で,私はどうやって歳をとっていけばいいのだろう。

どうやって自信がないまま,女であることを楽しめないまま,生きていけばいいのだろうか。

何か天変地異が起こるなりスーパーヒーローが死神と交渉するなりして,雨宮さんが11月17日にも生きている世界線に戻してほしい。

すべて過去形で書かなければならないことがつらい。

 

人ってこんなにあっけなく死ぬんだと思った。これからどんどん,そういうことが増えるのだろう。

訃報を知る直前,ちょうど私は死について考えていた。

博物館である展示を見たからだ。

それは,150年ほど前のお姫様が嫁ぐ時にそろえた嫁入り道具の展示だった。

「大事に育てられたお姫様が,たくさんの豪華な道具とともに幸せな結婚をしました」

というトーンの企画展示だったように思う。

展示の一番最後に,そのお姫様のその後の人生について,ごく簡単に紹介されていた。

 

16歳で結婚

18歳で第一子を出産。しかし子はすぐに死亡

23歳で夕食のビビンパをつまらせ死亡。妊娠中であったため手術でお腹の子どもを取りだしたが,こちらも助からなかった

 

え???ビビンパで死亡って...

こんなに大事に育てられ,鳴り物入りで嫁いで,そんな理由であっけなく死ぬの?

もしかしたら暗殺とかかもしれないけれど,どちらにしてもたった150年前はもっと簡単に人が死ぬ時代だったのだ。

というかそもそも,ここに展示してあるものを作った人,使った人はもう全員この世にいないんだ。

別に150年前じゃなくても,今日この博物館ですれ違った人も,明日生きているか分からない。

そしてたった100年後にはもう誰もいないんだ。

もちろん私も...。

 

そう思うと,何者かになろうとして足掻いたり,人間関係に悩んだり,自意識をこじらせていることがすべて無駄なように思える。

そもそもなんで生きてるんだっけ。少なくとも,私の両親が私に生まれてほしいと思ったから生まれたんだろうけども。

マジで,こういう何のために生まれて何のために生きるのか分からないまま終わるそんなのは嫌だ的なやつは10代のうちに済ませろよっていう話なんだけど,

大人の方が死に近いわけで,メメント・モリしたくなるときがあってもいいじゃないかとも思う。

 

しかし,そんなことを考えたところで悟りが開け,煩悩がなくなったりするかというと,残念ながらそう簡単に解脱できるわけでもない。

そして世をはかなんで死にたいわけでもない。

結局のところ,このまま雨宮さんのいなくなった世界で,自意識や欲望に身を焼かれながら,そしてそれらのすべてを空しく思いながら,順調にいってあと50年ほど生きるしかないのだろう。

まあ私のことはこのさいどうでもいい。

身の周りの大好きな人たちが,明日急にいなくなるかもしれないことの方が怖い。

そのときになって後悔しないように,千の夜を超えて好きな人には好きって伝えないとね...。

 

雨宮さん,大好きでした。

今までありがとうございました。

*1:もちろん私だけじゃなく,生きづらさを感じている人たちにとって,雨宮さんの書く文章は心のよりどころになっていたようだ。今回そのことを思い知った。

*2:改めて雨宮さんの連載記事を読むと,私が雨宮さんに影響を受けすぎていることに気づいて,自分にドン引いた。でも,あんな文章は私にはとても書けない